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ご回復祈願 [小説]

メールを拝読しました。

内臓の一部に元気がないとの診断は予想通りでしたので、僕としては君に休養を取っていただき、ご健康を回復してもらえる好機だと思っています。今回のようにお医者さまからご診断が出れば、君のご健康に無頓着なご主人様も少しは省みられると思いますので、ご静養環境も良い方向に整っていくことと思います。

人間の回復力というのは人知を超えて優れておりますので、ご心配は一切不要です。ご回復方法についてはお医者様に、また不要なご不安の解消は私に任せていただくのが最良かと思います。君はのんびりしていて下されば、いつの間にかご健康が回復していく運びになっております。

いよいよ僕の出番も近いかと思いますので、君もそのお心づもりでいらして下さい。

敬具

独りで生きる女 [小説]

(男と女、寄り添っている。)

女: 私は一人で生きていけるの。

(女の指に男の指が重なる。)

男: それはきっと、そう思わせてくれる誰かが、いつも傍にいるからさ。

(女は男の瞳を眺めながら恍惚としている。)

仕事の完成 [小説]

仕事の完成とは、人間の結びつきが織り成すシルエットに過ぎない。

才能と願望 [小説]

僕にはこれといった才能はない。
ただ、強い願望があるだけだ。

Dead Man Dying [小説]

占いのばあさんが言ったことを今でも覚えている。

「あんたの運命は、10年前に死んでいたはずだよ」

   ☆☆☆

繁殖期の結婚は避けた方がいい。

男と女、どちらにせよ、血迷っているから。

   ☆☆☆

人は、誰も一人では生きていない。

孤独とは、夢の自分と二人で生きることである。

   ☆☆☆

「人生は旅であり、旅は人生である」  ― 中田英寿氏 

   ☆☆☆

僕は、ツアーに来たわけじゃない。

   ☆☆☆

お遍路八十八か所、すべてをお参り致しましたが、
弘法大使さまの悟りというものは得られませんでした。

ただ、お参りの道中で何度も足をつまづき、
その都度、立ち上がって歩き続けました。

   ☆☆☆

「ロバが旅に出たとこで、馬になって帰ってくる訳じゃねえ」 ― バトーさん

   ☆☆☆

くやしいな。上には上がいるものだ。

― 君は、一番になりたいんだね。

   ☆☆☆

塑性変形。
その歪みは、もう元に戻らない。

歪み。
歪みと物性係数の積が応力になるもの。
ただし、弾性変形の範疇において成り立つ。

ストレス。
応力のこと。

ホスピタルでよく見かけるフレーズ。
応力のかけ過ぎには、くれぐれもご注意を。

   ☆☆☆

本当にやり直したいのなら、何もしないことだ。

   ☆☆☆

元の木阿弥?

冗談じゃない、後の祭りだよ。

   ☆☆☆

雪の重みで、太くて硬い枝ほど折れるそうよ。

だって、細い枝はたわみますもの。

   ☆☆☆

砕け散る、
若き血潮の頂きに、
鞭打つ僕が、微笑みかける。

   ☆☆☆

最期に、悔し涙だけは流したくないんだ。

― 君はもう、十分に優れていたことを証明したじゃないか。

また、これをやるしかないか。

― 何をだね?

ふと思い出したのさ。
この僕はとっくの昔に死んでいたことを。

― 行くがいい。死にゆく死者よ。

   ☆☆☆

運命は用意されているのかも知れない。

ただし、期限付きのものが。



日々新々 [小説]

目覚め知る、
朝の陽ざしの新鮮に、
生れし我は、駆け出す童。



立川談志を師匠と呼ぶべきだ [小説]

「酒を止めようとか、煙草を止そうというのは
 最も意志の弱い奴のやることだからね。
 
 酒は人間をダメにするものじゃないんですよ。

 人間はダメなものだと確認するために、
 酒は存在するんですから」
           
                ― 立川談志 『金玉医者』

   ☆☆☆

酒と煙草は体に悪い、なんてよく言いますな。

でも、もっと危険なものがありますよ。

それは、おんな。 女ですよ。

これには本当に参りますな。

実のところ、本当に参りました。

降参です。ぺこり。

完敗です。ぺこり。

白旗! 敬礼! ぺこりん。

この僕に一体何度ぺこりさせるつもりですか。

もう許してください。

本当に勘弁してください。

でもね、止められないんですよ。

やっぱり、好きなんだな、女が。

一体何なんだろうね、女って。

また、ぺこりするのかな。

僕はこれから先、何度ぺこりしていくのかな、女性に。

あぁ、僕はつくづくダメな人間だ。



万人の感情 [小説]

「病者の見地から、一段と健全な概念や価値を見て、
 又再び逆に、豊富な生命の充溢と自信とからデカダンス本能の
 ひそやかな働きを見下すということ ―― これは私の最も長い
 練習、私に特有な経験であって、もし私が、何事かにおいて
 大家になったとすれば、それはその点においてであった」
                     ― ニーチェ 『この人を見よ』

   ☆☆☆

俺は、俺の美神をこの手で絞殺しようと願った。

最後に、俺の美神は答えた。

― 絶望することは、生きることにおいて、もっとも安易なことです。

  すべてを糧にしなさい。

  あなたの、悲しみも、苦しみも、憎しみも。

  あなたの、不安も、恐怖も、喪失も。

  そう、あなたの絶望さえも。

  そして、万人の感情に達しなさい。

  それから、あなたは芸術家として歩み始めるでしょう。



才能 [小説]

君が歩むところに才能が現れるのであって、

才能だけでは決して君を歩ませることはできない。



Nothing lasts. [小説]

僕自身を傷つけることなしに、君の痛みに触れることはできない。

   ☆☆☆

彼女はいつもステップを踏んで見せてくれた。

― ジゼルはこう踊るのよ。

ソファに座って彼女を眺めているだけで僕は幸せだった。

― ねぇ、見て。

彼女のまっすぐに伸びた肢体がやがて白鳥になった。

そして白鳥は、緩やかな円弧を描いて空を舞った。

「きれいだよ」

きれいだよ。本当に君は。

でも、僕は知っていた。白鳥も、季節に移ろいゆく渡り鳥だということを。

― あなたもきて。

彼女は手首の白鳥をこっくりさせて僕を手招いた。

「まだ君を見ていたいよ」

彼女はひざ丈まで巻いたフリルを指先で摘み上げながらワルツを踊った。

「ずいぶんお転婆なジゼルだこと」

― もう!

むくれてみせる少女の顔も、彼女の美しさをより確かなものにさせるだけだった。

― これなら、どうだっ!

彼女はジゼルが死んでいったように、両手を広げたまま僕の胸に飛び込んできた。

― いじわるな人。

「そうかもしれない」

彼女は僕の胸に顔をうずめながら言った。

― いいえ、あなたはやさしい人。

僕の手のひらには、彼女の小さな胸のふくらみと、その上に転がる乳首の突起を感じていた。

彼女はぎゅっと僕の腕を強く抱きしめた。

― 過去は永遠に過ぎ去るのよね。

「そうさ」

― もうお別れなのね。

彼女の涙が僕の腕を伝って流れた。

「でも、僕たちの過去は変わらない。永遠に」

― わたしはあなたの思い出になるのね。

「思い出も、過去も、同じことだ」

彼女の視線を感じたが、僕は彼女を見つめ返すことができなかった。

― あなたのことを愛しているのよ。

「だから、二人の想いを永遠に閉じ込めるのさ。変わることのない思い出の中に」

― あなたを失ったわたしの哀しみも、永遠に消えることがないわ。

   ☆☆☆

彼女の瞳には、傷ついた青年の僕が映っていた。

愛し合う二人がともに生きていくことの意味が分かった気がした。

僕は彼女を強く抱きしめ、彼女を永遠に離さない、そう心に誓った。




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